バリの祈り人(シャーマン)
- ayamis2901
- 3月2日
- 読了時間: 5分
宮古島の御嶽でかみんちゅさんに興味を持ったことをきっかけに、祈り人(シャーマン)について個人的に研究しています。
「シャーマン」というと呪術や占い、祈祷を行うイメージですが、大きな定義としては、人の「不調和をなおすこと」が目的だというのが私の理解です。
不調和とは、身体的な病気、憂鬱など心の乱れ、見えないものとの関係性、などなど。
そして、目の前にある課題をシャーマンが解決するのではなく、間に立つ「媒介者」として調和をとることがシャーマンの手法(だと私は考えています。)具体的に言うと、古来では精霊や神々の意図を感じ取り、それを人々に伝える役割をはたしていました。
シャーマンに会いたいなと思い、見つけたのがバリ島の山奥に暮らす女性シャーマンさんです。
バリのシャーマンに会ってみて気付いたことを書いていきます。
シャーマンの性格と生き方の特徴
私は「修行」という名目でシャーマンに会いに行きました。山奥で電気も水道もない場所に住んでいると聞いていたので、厳格な修行を積んだ山伏のような人物を想像していました。しかし、実際に会ったシャーマンはとてもほがらかで、チャーミングなおばちゃん。のびのびとしており、ストイックさや我慢している雰囲気が一切ありませんでした。
滞在中も、宿坊のように「ごはんのときに話してはいけない」といった厳しいルールはなく、自由な時間が流れていました。食事には鶏肉が出され、修行というよりも、自然体の生活をしているように感じられました。修験道のように、悟りを求めて厳格な修行体系や戒律があるわけではなく、シャーマンは特定の教義に縛られず、個々の感受性や伝統に基づいて活動しているため、修行の在り方も異なるのだろうと思います。
シャーマンは、教義や組織に縛られないからこそ、より自然と調和しながら霊的な能力を発揮しているように見えます。彼らは神々や祖霊との対話を重視し、そのときどきの直感や、降りてきた言葉をを大切にするため、型にはまらない自由な在り方ができるのかもしれません。
バリのシャーマンは、ヒンドゥー教や土着信仰に根ざしながらも、特定の経典や組織に強く縛られることなく、個々の霊的なつながりを大切にしています。直感的な儀式を行い、神々や祖霊と対話し、薬草療法や祈祷を通じて人々を癒しているのです。バリアンは生まれながらに霊的な力を持つとされることも多く、個々の経験や師匠からの学びによって成長していく点も特徴的です。
自然との調和とシャーマンの環境
シャーマンの家は森の中にあり、自然の音が満ちていました。朝は鳥のさえずり、昼は川の流れる音、夜にはそれに加えて風の音が響きます。家のすぐ隣には流れの速い川があり、食事・お風呂・洗濯・トイレなど、すべての生活用水はこの川から得ていました。
私は、シャーマンのもとへ向かう途中でさまざまなトラブルに遭ったのですが、川で沐浴をしただけで気持ちが浄化されたように感じました。毎日この環境の中で暮らしていれば、自然と心が整っていくのではないかと思います。
森の在り方というのは、人間の社会にも通じるものがあります。
森では、誰かが頂点に立ってコントロールしているわけではなく、それぞれの命がそれぞれのペースで動きながら、全体として調和しています。無駄なものが存在せず、すべてが何かとつながり、相互依存の関係の中で森という大きな命が続いている。人間社会も森のように、調和的でありながらもポジティブな競争の中で、個々の個性を生かし、尊重し合いながら生きられたらいいなと思います。
儀式とシャーマンの影響力
シャーマンのもとでは、儀式も体験しました。昼には浄化の儀式がありましたが、私は特に体に問題がなかったそうで、何の効果も感じませんでした。普通は気を失ったりすることもあるそうです。おそらくですが、儀式の前に川でたっぷり沐浴をしていたため、すでに浄化されていたのかもしれません。
一方で、夜のお祈りの時間はとても荘厳な雰囲気がありました。私は普段、マントラにあまり興味がないのですが、シャーマンのマントラは不思議と心を落ち着かせるものでした。
シャーマンは「目に見えない流れ」を感じ取る力があるようですが、こちらから質問しない限り、特にアドバイスをくれることはありませんでした。敷地内でも何も考えずに自由に過ごすことができました。人助けに執着している様子も見られませんでした。占い師との違いを感じたのはその点です。
また、シャーマンには二人の女性が仕えています。バリでは珍しく、彼女たちは大学卒業後すぐにシャーマンのもとに来たそうで、結婚していません。そして「このまま神に仕えたい」と疑いなく語っていました。
日本の神社では、これほど疑いなく神に仕え続ける人はもういないのではないかと思っています。シャーマンの霊的な力もさることながら、人としての魅力や影響力がとても大きいのだと思います。
今回の滞在を通じて、シャーマンは単なる宗教的指導者やヒーラーではなく、もっと自由で自然と調和した生き方をしている存在だと感じました。戒律や教義に縛られず、個々の感受性や伝統に基づいて活動し、神々や祖霊と対話しながら、自分の直感を信じて生きている。その姿は、まさに「自然の一部」としての人間の在り方を体現しているように思えました。

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