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戸隠神社探検記──岩戸神話と山の神の重なり

更新日:6月25日


長野県・戸隠神社をめぐってきました。


深い山に抱かれた霊場の空気に、いろんな時代の信仰が重なり合っているのを感じます。


◆ 山の神から、岩戸神話の神へ

平安時代、この戸隠の地には山岳修行の行者たちが入り、水を司る「九頭竜」がこの地の神とされていたそうです。山の神と水の神は、昔から農耕を支える存在でした。


やがて鎌倉時代には、高野山や比叡山に並ぶ一大霊場に発展。室町時代、修行僧・有通が『戸隠山顕光寺流記』をまとめ、その中で天岩戸開きの神話が戸隠の由緒として整理されました。こうして今の「戸隠神社」の神々──岩戸開きに関わる神々たちが祀られるようになったようです。


もともとの山の神信仰に、中央の神話が重ねられていったようですね。


戸隠神社は山麓から、宝光社、火之御子社、中社、奥社の4つがあります。

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火之御子社──ちょっと不思議な由緒

戸隠山麓に4つ並ぶ社のうち、火之御子社(ひのみこしゃ)にはアメノウズメノミコトが祀られています。天岩戸で天照大神を誘い出した芸能神です。


他の社が僧によって守られていた神仏習合時代でも、火之御子社だけは神職が奉仕していたそう。たしかに他の院に比べると、ここはより神社らしい雰囲気でした。


でもふと気になったのが、「火之御子社」という名前と、アメノウズメが結びつく理由。創建は1098年と、他に比べてやや新しい時代。

なにか後から由緒が整理された経緯があるのかもしれません。



戸隠中社──華やかな鳥居の守護神

鳥居の両端がピーンと反っていてりりしい。「八幡鳥居」と言うそうです。

明神系に分類される華やかな鳥居で、神仏習合の色合いが濃く感じられます。こういう細部にも、修験道の歴史が残っているんですね。

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境内には日吉社もあり、滝のそばに瀧津姫命(たきつひめのみこと)が祀られています。

比叡山の日吉大社の神と重なる名前です。



ちなみに京都の比叡山にある「日吉大社」は、延暦寺より古くからあり、延暦寺を開いた最澄は、比叡山の麓に鎮座する日吉大社の神々を延暦寺の守護神にしました。

戸隠神社が建てられた時も、同じように元々あった山の神々を守護神としてまつったのでしょうか?


中社の主祭神は、岩戸開きの作戦を考えた天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)。

天の岩戸開きのときの作戦立案者で、神楽を創案したとされます。



中社から奥社に向かって登っていくと、途中、「女人堂」がありました。

戸隠はかつては女人禁制で、ここから先を越えた比丘尼が石になった伝説があるとか。


奥社──岩戸をこじ開けた神の社


中社から奥社に向かう参道は、雪で途中まで。奥社の主祭神は、岩戸を開いた力の神天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)です。

かつては宿坊も多く賑わっていたそうですが、今は静かな空気に包まれていました。冬の戸隠はとにかく雪が深い……また季節を変えて訪れたい場所です。




今回は行けなかったのですが、一番山麓にある宝光社には磐座があるとの情報。

ここが一番見たかった……!また次の機会にゆっくり訪れたいと思います。



戸隠神社は、岩戸神話の神々が祀られているけれど、その奥には山の神や水の神、昔からの自然信仰の気配が重なっていました。


いろんな時代の祈りが少しずつ重なって今の戸隠があるんだなと感じました。また季節を変えて、今度は宝光社の磐座まで行ってみたいです。

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